利用者とゆっくり関われるから訪問看護を希望していますとよく志望動機で聞くが、その動機で訪問看護に来ることは果たして正しい選択か
「利用者とゆっくり関われそうだから」という志望動機は、訪問看護への転職相談でよく耳にする言葉です。病棟や外来での忙しさを経験した方ほど、この言葉に実感がこもっているケースが多いように感じます。
ただ、この動機だけで転職を決めてしまうと、入職後に感じる印象と現場の実態にずれが生じることもあります。今回はこの志望動機を出発点に、訪問看護という働き方を少し立体的に見直してみます。
「ゆっくり関われる」と感じる背景
病棟時代の忙しさとの比較
病棟勤務では受け持ち患者数が多く、一人の患者に使える時間が限られると感じる場面もあるでしょう。訪問看護では、1件あたりの訪問時間が30分から60分程度とあらかじめ決められているケースが一般的です。この「決められた時間、一人の利用者に向き合える」という構造が、「ゆっくり関われる」という印象につながりやすいと考えられます。
-
一人の利用者に集中できる時間がある
-
ナースコールに同時対応を迫られる場面が少ない
-
訪問スケジュールがあらかじめ決まっている
実際の訪問看護は「ゆっくり」なのか
時間の使い方を比較する
| 項目 | 病棟看護 | 訪問看護 |
|---|---|---|
| 対応する人数 | 同時に複数人 | 1件ずつ順番に対応 |
| 時間の区切り | 業務全体の中で流動的 | 1件ごとに区切りがある |
| 移動 | ほぼなし | 訪問先間の移動が発生 |
| 記録のタイミング | 業務の合間や勤務後 | 訪問後や隙間時間 |
訪問時間そのものは区切られていても、移動時間や記録作業、報告書の作成などを含めると、1日の総労働時間は病棟勤務と大きく変わらないケースも少なくありません。「ゆっくり」という言葉のイメージと、実際の忙しさの質は必ずしも一致しない点は押さえておきたいところです。

動機の奥にある本音を確認しておきたい理由
「ゆっくり関われる」という動機自体は間違っているわけではありません。ただ、面接の場でこの言葉だけを伝えると、採用担当者から「忙しさから逃げたいのでは」という印象を持たれることもあるようです。動機の奥にある本音を、自分自身で言語化しておくことが大切です。
-
なぜ「じっくり関わりたい」と感じるのか、病棟での経験を振り返る
-
訪問看護でどんな看護を実現したいのか具体的に考える
-
一人で判断する場面が増えることへの備えができているか
志望動機を自分の言葉で深掘りする方法
志望動機を深掘りする際は、「なぜそう感じるのか」を具体的なエピソードに落とし込んでみると整理しやすくなります。
-
病棟でどんな場面に物足りなさや葛藤を感じたか、具体的に思い出す
-
同行訪問や説明会で、実際の1日の流れを確認する
-
オンコール対応や緊急時対応の体制を、事業所ごとに比較する

「ゆっくり関われるから」という動機は、訪問看護という選択肢に目を向けるきっかけとして自然なものです。大切なのは、その先にある働き方の実態を確認し、自分の言葉で動機を補強していくことだと考えられます。同行訪問への同席調整など、事業所ごとの違いを踏まえた情報を集めながら、判断材料を増やしていくとよいでしょう。
看護師